あれは25年程前の春、まだ私が小学生の頃初めて一人で連絡船に乗った時だった。船内の売店の
「お弁当コーナー」を見た時に「幕の内弁当」とか「あなご弁当」などに混じって他の弁当達とは
明らかに形状の違う異彩を放つ存在の弁当が鎮座していたのだ。その名も 「皿鉢弁当」 当時確か「幕の内弁当」が300〜350円ぐらいだった頃に、破格の700円。子供心にビックリした。 他の弁当とどう違っていたかと言うと、先ず容器。普通は経木とかを使った角型なものだが この「皿鉢弁当」の容器はなんとプラスチック製の楕円形のパーティー皿、しかも銀色であった。 「こんな大きめの皿持って食べる人いるのかな?」と首を捻りつつ中味をよく見ると 「巻き寿司」「伊達巻寿司」「揚げ物」などが入っているのだが、おおよそ一人で頂ける量ではない。 (当時私は結構大食いで弁当一個では物足りない少年だったが・・・・・・・) 「なんでこんな弁当が・・・・・・・」と思いつつ、そのまま私の記憶から消えかけていた。 |
中学生になった頃、何気なく、とある料理番組を見ていたら「高知名物・皿鉢料理」というのが
紹介されていて大皿に盛られた料理を見て例の弁当の事を思い出した。番組の解説によると
「大勢の人と酒を酌み交わしながら頂く・・・・・」というコメントが。
「なるほど、ワイワイと皆で頂く料理か・・・・・」と思い例の弁当の形状とか名称が何の事か
解ったような気がしたが、やはり気になったのが「船室の座席であの大皿はチョット邪魔では・・・・」。
しかし、以前連絡船に畳の部屋があってそれが廃止されたと言うニュースを思い出したと同時に
「これなら大皿を置いて何人かで車座になってお酒を飲みながら頂ける」と思った。なるほど、畳の部屋が
廃止になってもその弁当は当時の名残が残ってるのかと。そう言えば昔「する事無かったら酒飲む」
という習慣もあったし、鉄道使って移動の際にはお酒は付き物なんて感じでもあった。 さて、これを書いている頃はお盆の季節。帰省ラッシュで宇野駅の桟橋も賑わった頃、なんとか宇野線の ホームを走り桟橋を走り抜けてやっとの思いで座る場所をなんとか確保して、お酒を酌み交わしながら 皿鉢弁当を頂いてる人々の光景が目に浮ぶ様です。 (文:湊川凛太郎氏) |